「読書感想文、何を書けばいいかわからない」。原稿用紙を前に固まっている子どもの姿を見ると、親としては「この子、本を読んでも何も感じなかったの?」と不安になりますよね。
でも、安心してください。書けない子は「感想がない」のではありません。心の中には感じたことがちゃんとあるのに、それを言葉にする回路がまだ育ちきっていないだけなんです。
ベネッセの調査によると、小学生の保護者の約65%が読書感想文を手伝った経験があると回答しています。それだけ多くの家庭でつまずくポイントだということ。この記事では、元小学校教諭として10年間子どもたちの作文を見てきた経験から、「書けない」の原因を4タイプに分類し、それぞれに合った声かけの方法を紹介します。
読書感想文が書けない子の4タイプ
10年間の教員生活で何百枚もの読書感想文を見てきましたが、「書けない」には明確なパターンがあります。お子さんがどのタイプに近いか、観察してみてください。
タイプ1:あらすじで埋めてしまう子
原稿用紙を開くと、本の内容を最初から順番に書き写していくタイプ。一見たくさん書けているように見えますが、中身はほぼ「あらすじ」。「自分がどう思ったか」と「本に何が書いてあったか」の区別がついていない状態です。
タイプ2:「すごいと思いました」で止まる子
感想はあるのに、「おもしろかった」「すごいと思った」「かわいそうだった」のワンフレーズで完結してしまうタイプ。感情のボキャブラリーがまだ少なく、心の動きを細かく表現する言葉を持っていないことが原因です。
タイプ3:「正解」を探してしまう子
「先生に褒められる感想文って何を書けばいいの?」と聞いてくるタイプ。テストのように唯一の正解があると思い込んでいて、自分の素直な感想を書くことに不安を感じています。「世界平和」のような大きなテーマに走りがちなのもこのタイプです。
タイプ4:本の内容が頭に残っていない子
一応最後まで読んだけれど、「どんな話だった?」と聞くと首をかしげるタイプ。文字を目で追っただけで、物語の世界に入り込めていない状態。読書体力がまだ育っていない低学年や、本のレベルが合っていない場合に多く見られます。
タイプ別・親の声かけ術
子どもを主語にしましょう。「ちゃんと書きなさい」ではなく、「この子は今、どこでつまずいているんだろう?」という視点で声をかけることがスタートラインです。
タイプ1(あらすじ型)への声かけ
この子には「自分」を書いていいんだよ、と気づかせることが第一歩です。
- 「この場面を読んだとき、○○はどんな気持ちだった?」
- 「主人公と同じことが自分に起きたらどうする?」
- 「いちばんドキドキした場面はどこだった?」
本の内容と自分の心を行き来させる質問を挟むことで、「感想文には自分のことを書いていい」という感覚が生まれます。
タイプ2(ワンフレーズ型)への声かけ
「おもしろかった」の奥にある感情を、一緒に掘り下げてあげましょう。
- 「どこがおもしろかった?」→「なんでそこがおもしろいと思った?」
- 「かわいそうって思ったんだね。それは悲しい気持ち? それとも怒り?」
- 「もし○○がこの主人公の友だちだったら、なんて声をかける?」
「なぜ?」を1回だけ重ねるのがコツです。2回以上重ねると尋問になるので注意してください。子どもの言葉を「うんうん」と受け止めながら、ゆっくり引き出していく。その言葉をそのままメモしておけば、それがそのまま感想文の素材になります。
タイプ3(正解探し型)への声かけ
「感想文に正解はないよ」と言っても、このタイプの子にはなかなか響きません。代わりに、こんな声かけが効きます。
- 「ママ(パパ)はこの場面で○○って思ったんだけど、○○はどう思った?」
- 「先生が読みたいのは、○○だけの感想だよ。誰にも同じ感想はないんだって」
- 「間違いなんてないから、思ったことをそのまま教えて」
親が先に自分の感想を見せることで、「こういうふうに自由に言っていいんだ」というお手本になります。
タイプ4(内容が残らない型)への声かけ
そもそも読書の段階でつまずいているので、感想文の前に「読み方」をサポートします。
- 読みながら、心が動いたページに付箋を貼る
- 1章ごとに「今のところ、どんな話だった?」と区切って確認する
- 本のレベルを1段下げて、最後まで楽しく読める本を選び直す
わたしが教員時代に担当した5年生の男の子で、登校渋りが続いて勉強への意欲も低下していた子がいました。お母さんは焦っていましたが、本人が好きだった冒険小説で読書感想文を書かせてみたんです。一緒に文章を推敲して、校内コンクールに出したら満点。担任の先生に褒められたことがきっかけで、翌週から登校が再開しました。子どもの「好き」から始めると、学びは自然に立ち上がります。本選びの段階で「これ読みたい!」という気持ちがあるかどうかが、感想文の出来を左右するんです。
やりがちだけど逆効果な3つの声かけ
よかれと思ってやっていることが、実は子どもの筆を止めている場合があります。
1.「もっとちゃんと読みなさい」
「ちゃんと」が何を指しているのか子どもにはわかりません。具体的に「主人公がどんな気持ちだったか考えながら読んでごらん」と言い換えましょう。
2.「こう書いたほうがいいよ」と添削する
親が文章を直しすぎると、子どもは「自分の言葉では足りないんだ」と感じて書くのをやめてしまいます。拙くても本人の言葉を残すことが大事。親の役目は添削ではなく、「ここ、いいね!」と共感することです。
3.「まだ書けないの?」と急かす
大人の常識は通用しません。大人なら30分で書ける分量でも、子どもには何時間もかかることがあります。焦りは確実に子どもに伝わります。親が緩むと子も緩みます。「今日はここまで書けたね」と、進んだ分を認める声かけに切り替えてみてください。
読書感想文は「書く力」より「感じる力」のトレーニング
読書感想文のゴールは、上手な文章を書くことではありません。自分の心の動きに気づき、それを言葉にする練習です。
日常的にできるトレーニングとして、夕食時に「今日いちばん○○だったことは?」と聞く習慣をおすすめしています。「楽しかったこと」「びっくりしたこと」「もやっとしたこと」など、日替わりでお題を変えると飽きません。
感情を言葉にする回路は、日々の小さなアウトプットの積み重ねで育ちます。読書感想文の季節だけ急に「感想を書け」と言われても、子どもは困ってしまう。ふだんの会話のなかで「どう思った?」を問いかけることが、いちばんの準備になります。
FAQ
読書感想文におすすめの本の選び方はありますか?
いちばん大切なのは「子ども自身が読みたいと思える本」を選ぶことです。課題図書にこだわる必要はありません。好きなジャンルのなかから、ページ数が無理のない範囲の本を一緒に書店や図書館で選んでみてください。「この本、気になる!」という気持ちが感想文の原動力になります。
低学年の場合、親はどこまで手伝っていいですか?
低学年のうちは、親が「聞き役」になって子どもの言葉をメモしてあげるのは問題ありません。「この場面どう思った?」と質問し、子どもが口で答えたことを書き留めて、それを元に本人が清書する流れがスムーズです。ただし、親が文章を考えて子どもに書き写させるのは避けましょう。
感想が「おもしろかった」しか出てこない場合はどうすればいいですか?
「おもしろかった」は立派な感想の入口です。そこから「どの場面がいちばんおもしろかった?」「それはなぜ?」「自分だったらどうする?」と1段ずつ掘り下げてみてください。いきなり長い感想を求めず、3つの質問で3つの答えを引き出せれば、それだけで原稿用紙1枚分の素材になります。
読書感想文をきっかけに読書好きにさせたいのですが…
感想文を「義務」として押しつけると、読書そのものが嫌いになるリスクがあります。まずは感想文と切り離して、寝る前の10分読書や親子での読み聞かせなど、本に触れる時間を日常に組み込むことから始めてみてください。楽しい読書体験の蓄積が、結果として感想文にも効いてきます。
参考文献
- 読書感想文全国コンクール公式サイト ― 青少年読書感想文全国コンクール
- 読書感想文の書き方!簡単に書けるテンプレート&診断付き ― ベネッセ教育情報
- 小学生が読書感想文を書く5ステップの手順をご紹介 ― NTTドコモ comotto
- 読書感想文の書き方【小学生向け】を徹底解説 ― こどもまなび☆ラボ




