夜、子どもが寝静まったあと。ふとスマホを手に取って「子育て 失敗したかも」と検索してしまったこと、ありませんか?
SNSを開けば「子育てに失敗した」「子育て失敗する親の特徴」といった言葉が目に入り、胸がざわつく。今日、子どもに強い言い方をしてしまった自分を責めながら、正解を探してスクロールを続けてしまう――。
10年間小学校の教壇に立ち、今は中学受験コーチとして年間50家庭を伴走している私自身、保護者面談で何度もこの言葉を聞いてきました。「先生、私、子育て失敗してるんでしょうか」と。
先に結論をお伝えします。夜に検索してしまうほど悩んでいるあなたは、失敗なんかしていません。むしろ、それだけお子さんのことを考えている証拠です。
この記事では、「自分責め」を手放すための3つの視点をお伝えします。
なぜ親は「子育て失敗」を検索してしまうのか
文部科学省の「家庭教育の総合的推進に関する調査研究」(令和2年度)によると、子育てに不安を感じる女性は約8割にのぼり、男性より14.6ポイントも高い数値が出ています。つまり、不安を感じること自体はまったく特別なことではないのです。
問題は、その不安がSNSや検索によって増幅されてしまうこと。「うちの子、他の子より遅れてない?」「あの家はうまくやってるのに」――比較の情報が際限なく流れてくる時代だからこそ、大人の常識は通用しません。私たちが子どもだった頃とは情報環境がまるで違います。
ある保護者の方は、毎晩「子ども 言うこと聞かない 原因」と検索するのが日課になっていました。でも面談でお話を聞くと、お子さんは学校では友達も多く、のびのび過ごしている。家では甘えているだけだったのです。画面の中の「失敗像」と、目の前の子どもの姿は、たいていズレています。
視点1:「子どもを主語に」して今日一日を振り返る
自分を責めてしまうとき、主語はいつも「私」になっています。「私がちゃんとできなかった」「私の言い方が悪かった」と。
ここで一つ、試してみてください。子どもを主語にしましょう。「あの子は今日、何を楽しんでいた?」「あの子は夕飯のとき、何を話していた?」と。
主語を変えるだけで、見える景色がガラッと変わります。私自身、朝6時に起きて娘の登校準備をしながら、つい「今日はちゃんと送り出せるかな」と自分にプレッシャーをかけてしまうことがあります。でも「この子は今朝、何にワクワクしてるかな」と主語を変えた瞬間、娘がランドセルに昨日摘んだ花を入れていたことに気づけたりする。
子どもは、親が思うよりずっとたくましく、自分の世界を生きています。
視点2:「親が緩む」と子どもの本音が出てくる
これは中学受験コーチとしての経験から強くお伝えしたいことです。
以前、受験直前期に6年生のお子さんが「もう無理」と泣いた夜がありました。過去問で何度やっても合格点に届かない。塾の先生は「メンタルが弱い」と言いましたが、私は保護者の方に電話で1時間、こうお伝えしました。「点数より先に、お母さんが肩の力を抜いてください」と。
最初は戸惑っておられました。でも、お母さんが「不合格でもいいよ」と心から言えたとき、お子さんは自分から過去問を開き始めたのです。結果的に、その子は第一志望に合格しました。
親が緩むと子も緩みます。そして、緩んだ子どもは自分の力で動き出します。親の不安は、想像以上に子どもに伝わっています。だからこそ、「自分を責めない」ことは甘えではなく、子どものためにもなる大切な選択なのです。
視点3:「完璧な親」は子どもが求めていない
心理学の研究でも、親の過度な自己責めは子どもの情緒発達にネガティブな影響を与えることが示されています(Pomerantz & Eaton, 2000)。認知行動療法の研究では、親の罪悪感や否定的な自動思考を軽減することで、親子関係が改善されるという結果も出ています。
つまり、科学的に見ても「ダメな親だ」と自分を追い込むことは、子どもにとってプラスにならないのです。
私が教員時代に出会った、不登校気味の5年生の男の子のことをお話しさせてください。お母さんは「自分の育て方が悪かったのでは」とひどく落ち込んでいました。でも、その子の好きな冒険小説で読書感想文を一緒に書いてみたら、校内コンクールで満点をもらった。担任に褒められた翌週から、彼は自分で学校に行き始めました。
子どもが必要としているのは「完璧な親」ではなく、「自分を見てくれている親」です。好きなことに寄り添い、小さな成功体験を一緒に喜ぶ。それだけで十分なのです。
今夜からできる小さな一歩
もし今夜また検索しそうになったら、代わりに「今日、この子のよかったところ」を一つだけメモしてみてください。ノートでもスマホのメモでも構いません。
私は娘の「なんで?」攻めに対して、冷蔵庫に100円ノートを貼っています。子どもの「なんで?」を毎日1つ書き留めて、夕食後に一緒に調べる。それだけのことですが、1ヶ月後にノートを読み返すと、娘の関心がどう変化したかが見えてきます。
検索する代わりに、目の前の子どものことを1行だけ書く。「失敗」を検索する夜を、「発見」を記録する夜に変えてみませんか。
まとめ
- 視点1:主語を「私」から「子ども」に変えて一日を振り返る
- 視点2:親が緩むことは甘えではなく、子どもが動き出すきっかけになる
- 視点3:子どもは完璧な親を求めていない。「見てくれている」と感じるだけで十分
「子育て失敗したかも」と思える感受性は、あなたの強さです。その気持ちを否定せず、でも自分を追い詰めすぎず、明日もお子さんの隣にいてください。
よくある質問(FAQ)
- Q. 子どもに怒鳴ってしまいました。取り返しがつかないでしょうか?
- A. 一度怒鳴ったことで親子関係が壊れることはありません。大切なのは、あとから「さっきは言いすぎたね」と伝えること。子どもは親の「完璧さ」より「誠実さ」を見ています。謝れる親は、子どもにとって安心できる存在です。
- Q. 周りの子と比べて発達が遅い気がして不安です。
- A. 発達のペースは子どもによって大きく異なります。特に小学校低学年まではその差が顕著です。気になる場合は、学校の担任やスクールカウンセラーに相談してみてください。専門家の目を通すことで、「遅れ」ではなく「その子なりのペース」だとわかることも多いです。
- Q. SNSで理想的な子育てを見ると落ち込みます。どうすればいいですか?
- A. SNSに投稿されるのは「うまくいった瞬間」の切り取りです。裏側には同じように悩む日々があります。比較して辛くなるなら、寝る前の30分だけでもSNSを閉じてみてください。その時間を、今日の子どもの「よかった探し」に使うだけで、気持ちは大きく変わります。
- Q. 夫(妻)と子育ての方針が合わず、自分が間違っているのかと悩みます。
- A. 方針の違いはどの家庭にもあります。どちらが正解かではなく、「この子にとって今、何が必要か」を共通の問いにしてみてください。子どもを主語にした会話は、夫婦のすれ違いも穏やかにしてくれます。
- Q. 相談できる人がいません。どこに頼ればいいですか?
- A. 各自治体の子育て支援センター、こども家庭庁の相談窓口(0120-189-783)、またはスクールカウンセラーへの相談が可能です。「こんなことで相談していいのかな」と思う内容こそ、専門家に話してほしい内容です。一人で抱え込まないでください。
参考文献
- 文部科学省「家庭教育の総合的推進に関する調査研究 ~家庭教育支援の充実に向けた保護者の意識に関する実態把握調査~」(令和2年度)
- Nixon, C.D. & Singer, G.H.S. (1993). Group Cognitive-Behavioral Treatment for Excessive Parental Self-Blame and Guilt. American Journal on Mental Retardation, 97(6), 665-672.
- こども家庭庁「妊婦や乳幼児とその保護者を取り巻く生活実態調査」(令和7年3月)
- 東洋経済オンライン「子育てで自信喪失した親に伝えたい4つのこと」






