「なんで空は青いの?」「なんで夕ごはんはカレーなの?」「なんで大人は会社に行くの?」——朝から晩まで止まらない"なんで攻め"。正直、疲れますよね。私も娘が小学校に上がってから、自分が教壇で鍛えた忍耐力でも足りないと感じる日があります。

でも、ここで少しだけ立ち止まってみてください。子どもを主語にしましょう。「なんで?」の裏には、「もっと世界を知りたい」「お母さんと話したい」という気持ちが詰まっています。今日は、10年間小学校の教室で子どもたちの"なんで"に向き合い、今は中学受験コーチとして年間50家庭を伴走している私が、家庭でもすぐに使える3つの"返し技"をお伝えします。

そもそも「なぜなぜ期」は何歳まで? 小学生でも続くの?

発達心理学では、子どもの質問期は大きく2つに分けられます。第1質問期(2〜3歳)は「これなあに?」とモノの名前を聞く時期、第2質問期(4〜6歳)は「なんで?」と原因や理由を知りたがる時期です。脳神経の発達が3〜4歳で約80%、5〜6歳で約90%に達するタイミングと重なるため、この時期の好奇心は爆発的に伸びます。

ところが、実は小学校に入っても"なんで攻め"は終わりません。低学年のうちは教科学習で新しい知識と出会い、高学年になると社会のニュースや人間関係への疑問が増えます。大人の常識は通用しません。「もう小学生なんだから自分で考えなさい」と突き放す前に、質問の"質"が変わっていることに気づいてあげてほしいのです。

返し技① 「なんでだと思う?」で主語を子どもに戻す

教室で10年間使い続けた最強フレーズが、これです。子どもに「なんで?」と聞かれたら、まず「○○ちゃんはなんでだと思う?」と返してみてください。

ポイントは2つあります。

  • 必ず子どもの名前を呼ぶこと。「あなたの考えを聞きたいよ」というメッセージになります。
  • 子どもが答えたら、内容の正誤に関係なく「おもしろい考えだね」とまず受け止めること。

この2ステップを入れるだけで、"質問→回答"の一方通行が"対話"に変わります。私の娘も最近「なんで夕焼けは赤いの?」と聞いてきたので「夏希はなんでだと思う?」と返したら、「太陽が寝る前にパジャマ着るから赤くなるんじゃない?」と。思わず笑ってしまいましたが、こういう瞬間が子どもの想像力を育てています。

返し技② 「一緒に調べてみよう」で"共同研究者"になる

答えがわからない質問が来たとき、つい「あとでね」と言いたくなりますよね。でもその「あとで」が積み重なると、子どもは「聞いても無駄なんだ」と学習してしまいます。

そこで使いたいのが、「お母さん(お父さん)もわからないな。一緒に調べてみよう!」という返し方です。図鑑を開く、図書館に行く、検索してみる——方法は何でも構いません。大事なのは「わからないことを一緒に楽しむ姿勢」を見せることです。

以前、担任をしていたクラスで不登校気味だった5年生の男の子がいました。勉強への意欲も低く、お母さんは焦っていました。でもその子が好きだった冒険小説を切り口に、読書感想文を一緒に書いたんです。「この主人公はなんで洞窟に入ったと思う?」と問いかけながら。結果、校内コンクールで満点をもらい、担任の先生に褒められて翌週から登校が再開しました。子どもの"好き"から始めると、学びは自然に立ち上がるのです。

返し技③ 「なんで日記」をつけてみる

これは家庭向けにアレンジした方法です。100円ショップの小さなノートを1冊用意して、子どもの「なんで?」を1日1つだけ書き留めます。

  1. 子どもが質問したら、ノートに「きょうのなんで」として書く
  2. 夕食後や寝る前に、親子で一緒に答えを考える(調べる)
  3. 答えがわかったら子ども自身に書いてもらう

この方法のいいところは、「今は忙しいけど、ちゃんと覚えておくよ」という安心感を子どもに渡せること。そして1ヶ月後にノートを読み返すと、子どもの関心がどう変化しているかが見えてきます。朝6時に起きて娘の登校準備をしながら、私もこの「なんで日記」を冷蔵庫に貼っています。朝は「あとでね」と言ってしまうことも多いですが、ノートがあるだけで「忘れてないよ」と伝えられるのが心強いです。

疲れたときは「休んでいい」

3つの返し技を紹介しましたが、最後にいちばん大切なことをお伝えします。全部の「なんで?」に完璧に答えなくていいということです。

親が疲れていれば、「ごめんね、今日はお母さん疲れちゃったから、明日一緒に考えよう」と素直に言っていい。親が緩むと子も緩みます。親が自分を追い詰めている空気は、子どもにも伝わります。受験直前期に「もう無理」と泣いた6年生の子のご家庭に、私は「点数より先にお母さんが肩の力を抜いてください」と伝えたことがあります。休養後、お子さんは自分から過去問を解き始め、本番では第一志望に合格しました。

完璧な答えより、「あなたの疑問を大事にしているよ」という態度が、子どもの好奇心と自己肯定感を育てます。

まとめ

  • 返し技①「なんでだと思う?」で子ども自身に考えさせる
  • 返し技②「一緒に調べよう」で共同研究者になる
  • 返し技③「なんで日記」で質問を"資産"に変える
  • 疲れたら休む。完璧を目指さなくていい

よくある質問(FAQ)

Q1. 同じ質問を何度も繰り返すのですが、どうすればいいですか?

同じ質問を繰り返すのは、答えを確認したいだけでなく、「この話題でもっと話したい」というサインであることが多いです。「前にも聞いたでしょ」ではなく、「○○ちゃんはそれが気になるんだね」と受け止めてから、前回とは違う角度で一緒に考えてみましょう。

Q2. 忙しい朝に「なんで?」が止まらないとき、どう切り上げればいいですか?

「すごくいい質問だね! なんで日記に書いておくから、今日の夜一緒に調べよう」と伝えましょう。"後回し"ではなく"予約"に変えることで、子どもは安心して待てるようになります。

Q3. 小学校高学年でも「なんで?」が多いのは幼いのでしょうか?

むしろ知的好奇心が旺盛な証拠です。高学年の「なんで?」は社会や人間関係への関心の表れで、思考力が成長しているサインです。「もう大きいのに」と心配する必要はありません。

Q4. 親が間違った答えを教えてしまったらどうなりますか?

大丈夫です。「調べてみたら違ったね、こっちが正しいみたい」と訂正する姿を見せること自体が、「間違えてもいいんだ」「調べれば修正できるんだ」という学びになります。

Q5. 父親と母親で対応が違っても問題ないですか?

問題ありません。むしろ、いろんな大人がいろんな角度から答えてくれる経験は、子どもの視野を広げます。夫婦で対応を統一しなければと気負わなくて大丈夫です。

参考文献