計算は得意なのに文章題で手が止まる子に共通する「読み飛ばし」
中学受験の算数で「計算は速いのに文章題になると固まる」というお子さん、実はとても多いです。筆者は中学受験コーチとして年間50家庭を伴走していますが、算数の偏差値が伸び悩んでいるご家庭の相談で最も多いのが、まさにこの「文章題が解けない」という悩みです。
結論から言います。文章題でつまずく子の大半は、計算力ではなく「問題文を正しく読み取る力」でつまずいています。計算ドリルを何枚やっても改善しないのは、そもそも鍛えている場所が違うからです。
2026年5月現在、首都圏の中学入試では文章題の比率が年々上がっており、特に上位校では「条件整理+立式」の力を問う問題が主流になっています。計算スピードだけでは太刀打ちできない時代です。
つまずきの3タイプを見分ける――お子さんはどこで止まっている?
文章題が苦手な子を観察していると、つまずきポイントは大きく3つに分かれます。ここで大切なのは、子どもを主語にしましょうということ。「うちの子は算数ができない」ではなく、「この子はどの段階で止まっているのか」を見てあげてください。
タイプ1: 読解でつまずく子
問題文を最後まで読まず、数字だけ拾って計算を始めます。「りんごが3個」「みかんが5個」と見えた瞬間に「3+5=8」と書いてしまう。何を聞かれているかを把握する前に手が動いてしまうタイプです。
タイプ2: 立式でつまずく子
問題文は読めている。でも「この場面をどう式にすればいいか」がわからない。特に割合や速さの単元になると、かけ算なのか割り算なのかで迷い、手が完全に止まります。
タイプ3: 検算で落とす子
読解も立式もできているのに、最後の「答えの単位」「問いに対する回答形式」で失点する。計算結果を書いて満足してしまい、「聞かれていること」に戻らないのが原因です。
ステップ1: 音読+マーキングで「読み飛ばし」を防ぐ
まず読解のつまずきを解消しましょう。やることはシンプルで、問題文を声に出して読むことです。
「そんな簡単なこと?」と思うかもしれません。でも、上越教育大学の研究でも、文章題の理解において音読と図の併用が有効であることが示されています。黙読だと目が滑る子でも、声に出すと一文一文を処理するスピードが落ち、情報の取りこぼしが減ります。
具体的には次の手順です。
- 問題文を声に出して1回読む
- 「何を聞いているか」に赤線を引く
- 条件(数字・単位・「〜のとき」)に青線を引く
- もう一度黙読して、赤線と青線の関係を確認する
この「赤・青マーキング」は家庭ですぐできます。最初は親御さんが一緒にやってあげてください。1週間もすれば、お子さん一人でマーキングできるようになります。
ステップ2: 線分図で「場面を絵にする」練習
読解ができたら、次は立式です。ここで最も効果的なのが線分図を使った場面の視覚化です。
以前、6年生のお子さんを伴走したとき、過去問の文章題で連続して不合格点を取り、本人が「もう無理」と泣いたことがありました。保護者と1時間電話でお話しして、「点数より先に、親御さんが肩の力を抜いてください」とお伝えしました。親が緩むと子も緩みます。休養を挟んだ後、その子はまず線分図の練習から再スタートしました。問題文の場面を絵にする段階を丁寧にやり直したことで、立式への橋渡しがスムーズになり、最終的に志望校に合格しています。
線分図の練習手順はこうです。
- 問題文の「もの」と「量」を抜き出す
- 大小関係や変化を線の長さで表す
- 「?」を図の中に書き込む(=これが求めるもの)
- 図を見ながら式を立てる
最初は簡単な加減の問題から始めて、慣れてきたら割合や速さの問題に進んでください。ここで焦って難問に飛ぶと逆効果です。大人の常識は通用しません。子どもにとっての「わかる」は、大人が思うよりずっとゆっくり積み上がるものです。
ステップ3: 「答えを問いに戻す」検算習慣をつくる
最後のステップは検算です。ただし、ここでいう検算は計算のやり直しではありません。
「自分の答えが、問題の聞いていることに合っているか」を確認する作業です。
具体的には、答えを書いた後に次の3つを声に出して確認させてください。
- 「何を聞かれていた?」→ 赤線を見直す
- 「答えの単位は合ってる?」→ 「個」「人」「cm」など
- 「この数字、大きすぎない? 小さすぎない?」→ 常識チェック
この3問チェックを習慣にするだけで、ケアレスミスが驚くほど減ります。筆者の経験では、検算チェックを導入した家庭の約7割が、1か月以内に文章題の正答率が上がったと報告してくれました。
親が「教えすぎない」ことが最大のコツ
ここまで3ステップを紹介しましたが、最後にひとつだけ。親がやりがちなのが「答えまでの道筋を全部教えてしまう」ことです。
気持ちはわかります。横で見ていると、もどかしい。でも、先に答えを教えると、子どもの頭の中で「読解→立式→検算」の回路が育ちません。
親の役割は、つまずいた段階を見つけてあげることです。読解で止まっているなら「何を聞かれているか、声に出して読んでみて」と促す。立式で詰まっているなら「絵に描いてみたら?」と提案する。答えを出すのは、子どもの仕事です。
筆者は元小学校教諭として10年間、何百人もの子どもたちを見てきましたが、文章題が得意になった子の共通点は「親が待てた家庭」でした。焦らず、お子さんの表情を見て、つまずいた場所にだけ手を差し伸べてあげてください。
FAQ
文章題の練習は1日何分くらいが目安ですか?
小学4〜5年生なら1日15〜20分が目安です。集中力の持続時間は「年齢+1分」が目安とされており、長時間やるより短時間で毎日続ける方が定着します。
塾の宿題だけでは文章題対策は足りませんか?
塾のテキストは解法パターンの習得が中心です。「問題文を読み取る力」を鍛えるには、家庭で音読+マーキングの練習を別途取り入れると効果的です。1日5分の音読だけでも変わります。
線分図を嫌がる子にはどう声をかければいいですか?
「絵じゃなくてもいいよ。自分がわかるように描いてみて」と伝えてください。きれいな図を描く必要はありません。丸や矢印だけでも、場面が視覚化できれば立式の助けになります。
何年生から文章題対策を始めるべきですか?
理想は小学3年生から。ただし、4〜5年生からでも十分間に合います。「読んで→描いて→確認する」の習慣は、始める時期より続ける仕組みの方が重要です。
参考文献
- 中学受験 算数の文章題が苦手な子へ|つるかめ算・割合・並べ方の読み方と解き方 — 夏井算数塾
- 算数文章題において絵と数直線を併用する有効性 — 上越教育大学 数学教育研究, Vol.29
- 計算はできるのに文章題になるとわからなくなるのはなぜ? — ベネッセ教育情報サイト
- 令和2年度版 小学算数 図の指導系統 — 教育出版






